放っておくと一大事!? 「便秘と下痢の対処法」

2024/11/19 公開

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放っておくと一大事!? 「便秘と下痢の対処法」

ワンちゃんネコちゃんは、毎日快便がスタンダード。だからこそ、すっきりうんちが出ず便秘になったり、逆にゆるくて下痢になってしまったときは、飼い主さんも心配になるでしょう。でも、便秘も下痢も、その原因は案外、人と似ていたりするのです。慌てずに様子をみて解決へと導いてあげられるよう、便秘と下痢の基礎知識をしっかり学んでおきましょう。

知っておきたい、便秘の原因

 

ワンちゃん、ネコちゃんの場合、1日1〜3回排便があるのが普通で、2日以上出ないときは便秘と考えましょう。

 

便秘を招く身近な原因は、水分不足、繊維食不足、運動不足の3つです。人間と同じですね。便秘がちなときは、食生活や飲み水の場所、散歩の時間など、生活環境を思い出し、不足がないか考えてみましょう。
特に猫は水をあまり飲まないため、水分不足から便秘になることがよくありますので、気をつけてあげましょう。

 

高齢のワンちゃんに多い甲状腺機能低下症や上皮小体機能亢進症も便秘の原因になり得ます。また、去勢していない高齢犬の場合、前立腺が肥大して、物理的に便が出にくくなることがあります。便が過剰に固くないのに、細い便が出たり、出にくそうにしているときには、上記が疑われます。

 

高齢の猫ちゃんに多い慢性腎臓病も便秘の原因になります。体内に水分を止めておけなくなるので体の中の水分が減り、腸の動きそのものが悪くなります。その結果、便の水分の吸収量が増えて出にくい便になったり、反対に、体の水分が減ってしまっているので、そもそも便に入る水分が少ないなどの悪循環が起こりがちです。

 

繰り返す便秘を放置すると、大腸(結腸)がそれに対応して大きくなってしまい、便が出にくい形で留まってしまう巨大結腸症になることもあるので、長く放置せずに受診していただくことをおすすめします。

 

 

【便秘体質にオススメの漢方】

三仙(さんせん)
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
麻子仁丸(ましにがん)
潤腸湯(じゅんちょうとう)
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
四逆散(しぎゃくさん)
柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

 

慢性的に便秘が続く場合は、食事内容や運動を含めた生活環境を見直すとともに、体質改善として漢方薬を利用してみるといいでしょう。

また、便秘の原因には、大腸癌や前立腺癌などの腹腔内腫瘍、前立腺肥大といった重大な病気があるため、便秘を繰り返す場合は西洋医学的な検査もしっかり受けておきましょう。

 

■生薬のイメージ写真です。様々なものを並べてあります。

 

おうちでできる、便秘解消法

病的な理由のない便秘の場合であれば、いちばん取り組みやすいのは食事の改善です。病院には、消化しやすい成分のご飯や不溶性繊維、可溶性繊維が豊富で快便の助けになるものがありますので、相談してみるといいでしょう。

 

食事の補助として利用できるサプリメントでも、最近は自分の乳酸菌を育てるようなバイオジェネクス製品が注目されていますので、利用を検討してみるのもいいと思います。

 

中医療の視点からは、マッサージも有効だと考えます。お腹を触るのを嫌がらない子であれば、仰向けになってもらい、右足の付け根あたりから“の”の字を書くように、優しくマッサージしてあげましょう。このとき、ワンちゃんやネコちゃんがリラックスしていることが大事です。

 

また、おへそからその動物の指の幅3本分外側に「天枢」というツボがあるので、おへその周囲を優しくマッサージしてあげるのも効果的です。

 

仰向けが苦手な子には、背中のマッサージもあります。
背骨の両脇の「背最長筋」(人間もマッサージをしてもらうと気持ちのいい部分です)に沿って経絡が走り、さまざまなツボがあります。

 

肋骨が終わるあたりから腰にかけては便通に効果的なツボ(脾兪、胃兪、三焦兪、大腸喩)が並んでいるので、頭の側から腰に向けて優しくマッサージしてあげると、心身ともによいと考えられています。

 

 

知っておきたい、下痢の原因

 

【下痢】

下痢の原因でいちばん多いのは、ストレスです。こちらも、人間と似ています。

 

ストレスといってもいろいろで、わかりやすいものでは、来客が多かった、怖い犬に吠えられた、遠出をした、動物病院で注射を打たれたというのもけっこう多いです。天気が急に悪くなった、朝晩の寒暖差が激しいなど、飼い主さんにはコントロールのできないストレスもあります。

 

ストレス以外の理由では、ゴミ漁りで古いものや傷んだものを食べてしまい下痢になるケースが案外多く見られます。ワンちゃんは脂っこいものに弱いので、天ぷらの盗み食いの後に下痢・吐き気があるときは急性膵炎が疑われます。

 

また、牛乳が大好きな子は多いですが、牛乳の糖分である乳糖(ラクトース)が消化できないため、少量でも下痢になることがありますので注意が必要です。

 

病的なものとしては、先ほどの急性膵炎の他に、免疫介在性(アレルギー性)のものが考えられます。具体的には炎症性腸炎、リンパ球プラズマ細胞性腸炎、好酸球性腸炎や食物アレルギーでも下痢が起こります。これらの病気の場合は治療にステロイドなど免疫を抑制する薬が必要になる場合もありますので、動物病院へ相談してください。

 

また便秘の時にも出てきましたが、慢性腎臓病も体に毒が溜まってしまうため下痢になりやすい病気です。高齢の猫ちゃんで下痢が続くときは腎不全、甲状腺、リンパ腫など疑われるのであまり様子を見ないで、早めに病院に行くようにしましょう。

 

【下痢体質にオススメの漢方】

三仙(さんせん)
小建中湯(しょうけんちゅうとう)
人参湯(にんじんとう)
五苓散(ごれいさん)
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
加味逍遥散(かみしょうようさん)
藿香正気散(かっこうしょうきさん)
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

 

数週間も下痢が続く場合は、慢性的な下痢と診断されます。お腹が普段から弱く食べすぎたり、普段と違ったものを食べたりするとすぐ下痢してしまう、下痢と便秘を交互に繰り返す、便の最後だけ緩い、といった場合などは症状の改善に漢方薬が適していることがあります。
しかし、細菌・真菌・寄生虫による感染症や消化管内の腫瘍、膵外分泌不全、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、炎症性ないし蛋白漏出性腸疾患といったものでは、西洋医学的な治療をメインとする方が有効な場合もあります。
慢性的に下痢が続く場合は、感染症や腫瘍などが隠れていないかどうか何度か検査を繰り返し、しっかり原因を追究しておきましょう。

 

監修者:厚木キジュ動物病院 / 難波勝則 院長

日本ペット中医学研究会 https://j-pcm.com/

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