その子が持ち合わせる疾患によって最期の迎え方は異なりますが、多くの場合、命の終わりが近づいてきていることは、その子の全身状態を見ているとわかります。
かたわらで見守っていると、ゆっくりと全身の力が抜けていき、次第に呼吸が不規則となり、やがて、口で呼吸をする開口呼吸の状態となります。最後はあえぎに似たような様子となって、やがて呼吸が止まります。そして体の力が抜けていき、心臓が停止し、旅立ちの瞬間を迎えます。
てんかんの重責のような神経疾患を持っている子の場合には、最後を迎える時、全身に強いけいれんが生じることがあったり、心臓疾患を持つ子の場合には、心臓から肺への影響で呼吸がとても浅くなり、徐々に力をなくしていくような形で最期のときを迎えることもあります。
また、高齢の猫の場合、慢性腎臓病を患っていることが多く、その末期には尿毒症の症状が現れます。尿から排泄されるべき老廃物が血液中を巡るため、神経や消化器などに影響が出て、けいれんや嘔吐、タール状の下痢といった症状が出たり、ときには、最期を迎えるにあたり、かなり苦しそうな様子を見ることもあります。
痛みの緩和や食欲の回復に漢方が役立つこともある
苦しんでいる愛犬、愛猫のために何かできることはないか。飼い主さんなら誰もがそう考えることでしょう。
最期を迎える際、愛犬、愛猫が安寧に過ごすことを妨げている原因は何かを見極め、苦痛から解放されるような効能を持つ漢方薬を処方することがあります。たとえば、痛みをやわらげる疼痛緩和の漢方薬であったり、食欲のない子が少しでも食べ物に興味を示すように気や血を補うような漢方薬を体に取り入れることによって、安らかな最期を迎える一助となることが期待されます。
食欲の回復という点においては、少しでも食べ物に興味を示す姿が、飼い主さんの心の救いになるケースも少なくありません。
漢方薬ではなく西洋薬を選択することも考えられますが、食欲のない子に西洋薬を服用させるのは現実的に難しいといわざるを得ません。その点、漢方薬であれば水に溶いて飲ませてあげることができるため、その子の状態によっては漢方薬をおすすめする場合があります。
最期の迎え方はさまざまですが、大切なワンちゃん、ネコちゃんを納得のいく形で見送ってあげるためにも、いろいろな選択肢があることを知っておきましょう。
監修者:厚木キジュ動物病院 難波勝則院長