猫という魅惑の生命
猫ならではのツンデレな性格、もふもふ感がファンを魅了します。
猫は平均寿命が約15年ですが、食餌や獣医療の向上によってさらに高寿命化しています。
寿命がながくなるにつれ、人間と同じように生活習慣に関係した疾患や慢性腎臓病によって不調をきたすことがあります。
こんなとき私たちが漢方や中薬でお役に立てることがあります。
今回は、猫に漢方や中薬を健康にどう役立てることができるかをご紹介します。
中医学と猫
中医学の歴史は非常に古く、動物への応用も農耕や軍用に関わる大動物から始まり現代に至ります。そのため、人間以外の中医学の歴史も長く、愛玩動物である犬や猫にはそれらのノウハウが活かされています。
気血津液や陰陽五行と知った基本的な中医学の考えに基づいて、猫にも漢方が処方されます。
猫は慣れていない場所や状況におかれると警戒心が非常に強くなるため、鍼灸や漢方に抵抗をする場合があります。猫大好き人間なのですが、いまだに猫には謎な部分が多いなと思っています。
中医学を猫に活用することが多い場面は?
猫では犬と同様に中医学を応用できる機会が多数あります。慢性疾患での使用が多いのですが、急速に症状を抑えたい場合でも活躍します。
・おなかの不調:下痢や吐き気、慢性的な食欲の不調など
・皮膚の不調:猫はアレルギーが原因のものや、案外多い心因性の過剰な毛づくろいなど幅広く対応します
・泌尿器の不調:膀胱炎や腎臓そのものの機能低下に伴う養生に対応します
・呼吸器や感染症:猫のカゼや口内炎にも漢方が有効な例があります
中医学は、同じ疾患名であっても体全体のバランスや症状の出方、個々の身体的な特徴などから「証」を決定し、それに合わせて漢方を選んで処方します。「同病異証」といい、同じ疾患であっても治療のアプローチが異なることがあるのが中医学の面白いところの一つですね。
じゃあ猫に漢方を飲ませられるの?
猫の味覚は人間と異なり「甘味」がほぼありません。お薬を甘くすれば必ず飲んでくれるということではありません。苦味が強いものも多いのですが、筆者は投薬用ちゅーるや水飴などを活用します。錠剤の方が上手に飲めることがありますので、主治医の先生にご相談してみてください。
漢方が安全性が高く副作用が少ないといわれますが、猫ではユリ科の植物に対して腎臓にダメージを与える可能性があります。例として「麦門冬」や「知母」などです。そのため、漢方や中医学に十分知識のある獣医師から処方を受けることが大切です。
猫との健康な生活に中医学をお役立てください
動物病院で診察をしていますと、年齢が20歳に達した猫ちゃんを見かけることがかなり増えたように思います。猫への健康意識の向上や室内飼育の増加など、様々な要因があると思います。長生きできるチャンスが増えた分、健康で幸福に過ごすことがますます重要になるものと思います。
病気になる前の段階である「未病」の状態から漢方や中医学は使用できます。むしろこのような状況で大いに活躍する分野ともいえます。
猫ならでは注意点がありますが、心配するほど漢方が飲めないということもありませんし、比較的飲ませやすいものもありますので、ぜひご活用ください。