どうして中医学を勧めたいのか?というのにも繋がってくるので、中医学の中で、これは知っておいた方がいいですよ、っていう基本的なことを少し書いてみます。。
中医学の基本・・・
中医学(中獣医学)の基本、または特徴として、
・整体観(せいたいかん)
・弁証論治(べんしょうろんち)
・未病先防(みびょうせんぼう)
が大事と言われます。
あまり馴染みがない漢字かもしれませんが、 この中でも、「未病先防」は中医学の大きな特徴なんです。
全部知っておいた方がいいのですが、個人的に、ここから、お伝えしたいんです。
なので早速ですが、「未病」という言葉はご存知でしょうか?
中医学では、西洋医学ではあまり聞き慣れない「未病」という考えがあります。
「未病(みびょう)」とは
「未病」を検索すると
・発病には至らないものの健康な状態から離れつつある状態
・病気ではないが、健康とも言えない状態
・自覚症状はないが検査結果に異常がある状態
・自覚症状はあるが、検査結果に異常がない状態
などが表示されます。

一般的には、病気になりそうな病気でない状態、または病気がよくなった後など、放っておくと病気になる可能性がある半健康状態、などと解されています。

「未病」という言葉は、中国最古の医学書とされる「黄帝内経」や「難経」などに「治未病」の記載があり、中医学には2000年以上も前の漢の時代から「未病」の概念があります。

「上工は未だ病まざるを治す、己病は治せず」
優れた医者は病がまだ現れないうちにその異常を治療し、すでに重くなった病には手をつけない。
「己病の治療ばかりするのは中工」
すでに発症した病の治療ばかりするのは普通の医者。という医学書の有名な一節があります。
そしてこの「未病」を、病気の手前で病気にならないようにしていく、ということが、「未病先防」です。
中医学診療が得意とするのは、「未病先防」です。
中医学では、ここで病気にならないように手をうつ、「未病先防」が得意なんです。これが西洋医学と違う大きなメリットと思います。そうなんです。西洋医学では、病気の証拠をもとに進めていくので、「未病」っていう感覚があんまりないんですよ。特に獣医学では、自覚症状を見つけるのが難しいこともあるためか、やっと少しずつ進んでいる状況なんです。
メタボを例に挙げると・・・
例えば、メタボの肥満体質のペットの場合、健康診断で検査に異常がみられなかった、という場合、既病を扱う西洋医学的には「体重に気をつけてください」と言われるだけ、なんていうことがあるかもしれませんが、未病先防という考え方からは、積極的に先手を打つ体質改善の提案をできるのです。
中医学的には、生活習慣・食生活・環境の見直しに加えて、薬膳や生薬、漢方などをその時の体質(この場合だとおそらく痰湿や瘀血などの体質)に合わせて利用します。
しかしながら、動物病院に来院されるペットは「未病」の時期はとっくに過ぎてしまい、「病気」になってからの来院が圧倒的に多いのが現状です。
「何か変だな、と思ってたんですけど」という時点で「未病」の時期はほぼ終わっています。
もうちょっと早く連れてきて!というケースもまだまだ多いんです。裏を返せば、「未病」状態の時に気づいてあげる、見つけてあげることがなかなか難しい現状もあると認識しています。
上の肥満の事例で想像すると、「未病」の時期の例としては、外見的には元気ですが、
(犬の場合)歩き方が少し遅くなった、階段の時に少し立ち止まる、とか
(猫の場合)ジャンプするけど高いところに行かなくなった、爪が太くなった
なんていう仕草の時かもしれません。
この先「病気」になる可能性があるサインには、「うちの子はいつも元気でご飯もよく食べてます」というのもあります。一見、良さそうなお話ですが、お水は飲んでますか?と聞くと、よく飲んでますよ。いつも空になるまでいっぱい飲んでます。なんていうと、それは多飲多尿の病気のサイン?!なんていうことが結構あります。多飲多尿は糖尿病や腎臓病など、内臓疾患などの時に起こりますが、肥満気味の子が、お水よく飲んでる、なんていうと、病気かもしれない!ってなるわけです。
観察で気づける時もありますが、西洋医学をうまく積極的に利用し、検査をできると、「未病」なのか「病気」なのかがはっきりします。大丈夫、となれば先ほどのように食事や生活習慣の改善がメインとなる「未病」対策でよし。となるかもしれませんが、異常!となれば「病気」!な訳です。外見が元気でも。
私たちは、「病気」も「未病」もみていますから、やはり、もっと早くきてよ〜という「未病」の時期を逃したくないんです。だから、早い声かけをどんどんするわけです。
でも、「大変心苦しいのですが、この子はもう肥満ですよ」って言うと、「うちの子は太っていると思ってもいませんでした。」ということも結構あるんです。
まったく初めての方にこれを伝えるにも結構勇気が必要なのですが、中医学を利用して「未病」対策をすることができれば、もっと早く連れてきて!っていうのを減らせるかもしれません。
そういう理由があるから、中医学をお勧めするのです。