ペットの年齢

2025/06/07 公開

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ペットの年齢

ペットと人の年齢の換算方法はご存じでしょうか?
日常の診療で「うちの子は人に例えたら何歳ですか」とよく聞かれます。

諸説あるようですが、犬では身体の大きさによって平均寿命が異なることを考慮して、小型・中型犬と大型犬の2グループに分ける表をよく見かけます(表1)。

<小型・中型犬・猫>

生後1年を過ぎた位で人でいう“成人”になり、その後は1年毎に人の4歳年をとり、人より駆け足で生きてゆくと考えられています。

<大型犬>

幼少期の成長は遅く、生後2年位でゆっくりと“成人”になり、その後は1年に人の7歳年を取り、自分よりサイズの小さい犬や猫よりも駆け足で生きてゆくといわれています。

大型犬はゆっくり大人になるのに、その後早く年をとる? 何だか不思議で、不公平な気もします。

動物の寿命は、身体の大きさ、心拍数に関係するといわれます。

以前、“ゾウの時間とネズミの時間”という本がベストセラーになりました。

ゾウの平均寿命は約70年、ネズミは約1年と大きく異なりますが、どちらも一生で心臓が拍動する回数は同様に約15億回だそうです。

小型犬と大型犬では、大型犬の方が心拍数は少ないので、この法則で行くと寿命はより長くなると思われます。

この表を初めて見たときは、何だか辻褄が合わないなと思いましたが考えても理由がわからず忘れていました。

しかし、その後出会った中医学の年齢の考え方により、長年合わなかった辻褄が合いそうな気がしてきました。

中医学で考える人の年齢

中医学で考える人の年齢に関して、男女の歳の重ね方の違いを記した有名な表があります。

2,000年前に書かれた中医学の古典「黄帝内経」では女性は7の倍数、男性は8の倍数が健康年齢の節目になると記載されています(表2)。

この表を見ると、女性は男性と比較して早めに性成熟などの身体の成長が進んでゆきます。成長が早ければ老化も早いと思いがちですが、寿命に関しては皆様もご存じのように女性が勝り、日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性は81.05歳(厚生労働省2023年)です。

黄帝内経と犬の年齢換算表

この黄帝内経を元にした表を初めて見たのは獣医師になってからでしたが、職業柄か犬の年齢換算表のことが思い浮かびました。

以前から不思議に思っていた、小型・中型犬・猫と大型犬の歳の重ね方の違いの謎をとくヒントがここにあるのではないか?

小型・中型犬・猫は、大型犬に比べて長生きだが性成熟は早い。

早く大人になって、後から大人になった大型犬がどんどん年をとるのを横目に長生きするという、チャッカリした印象があります。

このことで、さらに中医学的に思い浮かんだものが陰陽表による男女、大小の分類です。陰陽に分けると、女性は陰、男性が陽、大小においては小が陰、大が陽です(表3)。

陰と陽の解釈について

人における女性と、犬猫での小さいグループが共に陰、男性と大きい犬が陽だと考えると何だか通じるもの、ありませんか?

早く成熟して、その後のんびり成長して長く継続する性質が陰、遅く成熟するがその後の成長(衰え)が速いのが陽ということなのでしょうか?

陰陽はあくまでも比較する対象内での分類であり、犬も体格ではなく性別で分ければ雌が陰になるだろうし、人の中でも大小などと分け始めればキリがありません。「陰中の陽」、「陽中の陰」という言葉もあり、一旦分けた陰陽の中でさらにまた分かれるといった複雑な理論となり、解釈が難しいです。ただし、この中医学の考えは何千年にもわたり長く存続していることは事実なので、私たちの理解が及んでいないだけで、天の法則のようなものを示しているのかもしれません。

このように身近な疑問を自分なりに中医学的に解釈してみることは、なかなか楽しいものです。

寿命について

寿命のことばかり考えると、暗い気持ちになってしまうかもしれません。

私が子供の頃(50年前?)と比較すると、人もペットも平均寿命は延びています。

でも、いつかは人も大事なペットも命を終えます。

このあまり考えたくはない現実に、どう向き合えば良いのでしょう?

中医学における老化の考え方

中医学では、老化を“腎精(じんせい)の消耗”と考えます。この“腎精”とは生命力の源のようなもので“腎(じん)”に蓄えられています。

“先天の精”は親から頂いて持って生まれた気力・精力のようなもので、“後天の精”は生まれた後に生きていく中で呼吸や食事から獲得した栄養、気力・精力のことをいいます。

歳を重ねるごとに減少してしまう、この“腎精”を養うことが人でもペットでも重要です。中医学では古来より、“補腎”(腎を補う)作用のある食事や生薬を用いる、身体を温めるツボを刺激する、生活習慣の改善をするなど、様々な方法を用いて昨今で言うアンチエイジングをすすめています。

日頃の1日1日の暮らしを今一度見直し、より穏やかな暮らしを心がけたいものです。

中医学の知恵でできることがあります

中医学には長い歴史の中で培われた、たくさんの素敵な知恵があります。

大切なペットの今の状態に適した方法はきっとあるはずです。

生活習慣の見直しなのか、漢方サプリメント、食事、鍼灸、マッサージなど……

慌てず、急いで、正確に(あまり先延ばしにせずに、適した方法を)一緒に考えてゆきましょう。

監修者:むつあい動物病院 / 金井 修一郎 先生 

日本ペット中医学研究会 https://j-pcm.com/

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