犬猫の筋肉が落ちる「サルコペニア」って? <br>中医学でできるやさしいケア

2026/03/14 公開

  • ニュース
  • 特集
  • 老犬&老猫を知ろう
  • ペットの漢方(中医学)

犬猫の筋肉が落ちる「サルコペニア」って?
中医学でできるやさしいケア

犬や猫も、人間と同じように高齢化が進んでいます。そして、高齢期に差し掛かると多くの飼い主さんが直面するのが、「サルコペニア」という問題です。

サルコペニアとは

サルコペニアとは、加齢に伴い筋肉量と筋力が減少していく状態を指します。ただの老化現象と見過ごされがちですが、これが進行すると、立ち上がりにくくなったり、ふらつきやすくなったり、最悪の場合は寝たきりにつながることもあります。


西洋医学のアプローチと中医学のアプローチ

西洋医学では、高タンパク質な食事と適度な運動が推奨されますが、それだけではなかなか改善が見られないケースも少なくありません。西洋医学的なアプローチだけでなく、中医学の養生法を取り入れることで、愛犬・愛猫の健康寿命を延ばし、充実した暮らしをサポートすることが可能です。中医学では、サルコペニアを単なる筋力の衰えではなく、体全体のバランスの乱れとして捉え、根本的な体質改善を目指します。

サルコペニアは、加齢に伴って筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下する状態を指します。犬や猫では以下のような症状が見られます:

  • 以前より動きたがらない、活動量の減少
  • 階段の昇降を嫌がる
  • 立ち上がりに時間がかかる
  • 筋肉の減少により背骨や骨盤が目立つようになる
  • 全体的な元気の減退

これらの症状は「ただの老化」と見過ごされがちですが、適切な対策により進行を遅らせ、改善することが可能です。

「気」 「血」 「津液」のバランスが大事です

中医学には、体を構成する3つの要素である「気(き)」「血(けつ)」「津液(しんえき)」という概念があります。気は生命活動のエネルギー、血は全身に栄養を運ぶ血液、津液は体内の水分や体液です。これらがスムーズに巡り、バランスが取れていることが健康な状態とされます。サルコペニアは、主にこの「気」と「血」の不足、そして体内で栄養を吸収・生成する働きを司る「脾(ひ)」と、生命の根源や老化を司る「腎(じん)」の機能低下が原因と考えられます。

「脾」や「腎」の機能が低下すると・・・

  • 脾の機能低下: 食事から「気」や「血」を作り出す力が弱まり、全身に栄養が行き渡らなくなる
  • 腎の機能低下: 加齢により腎の気が衰えると、成長や生殖、老化といった生命の根源的な活動に支障をきたし、結果として筋肉や骨が弱くなる

つまり、サルコペニアの予防には、これら「脾」と「腎」の働きをサポートし、「気血」を補うことが重要になってきます。筋トレだけではなく、体の中から整えるケアが大切です。

1. 食養生:脾胃を強化する食材の選択

消化器系(脾胃)を強化し、気血を補う食事が重要です。

温かい食事:冷たいものは消化機能を低下させるため、常温または人肌程度に温めた食事を与える

消化によい食材:鶏肉、魚、南瓜、サツマイモなど




気を補う食材:鶏肉、牛肉、米、イモ類など




血を補う食材:レバー、ほうれん草、ニンジンなど




腎精を補う食材:すっぽん、羊肉、黒ごま、クコの実など




2. 適度な運動:気血の流れを促進

動かさないと筋肉はどんどん減ってしまいますが、無理に動かすのも逆効果です。

適度な運動は気血の流れを促進し、筋肉維持に役立ちます:

犬:短めの散歩や、少しだけ坂道を歩く

猫:おもちゃで軽く遊ぶ、キャットタワーを使った昇り降り

3. マッサージとツボ刺激

優しいマッサージは気血の循環を改善し、筋肉のこわばりを緩和します:

背中沿いのマッサージ:背骨に沿ってゆっくりと優しく撫でる

足のマッサージ:手足の先から心臓方向に向かって優しく揉む

ツボ刺激:

  • 足三里(あしさんり): 膝の外側、下方にあります。胃腸の働きを整え、体全体のエネルギーを高める万能なツボです。足腰の強化にも効果的。




  • ​三陰交(さんいんこう): 後肢の内側、くるぶしの少し上にあります。脾、腎、肝の3つの経絡が交わる重要なツボで、血を補い、ホルモンバランスを整える効果が期待できます。




  • 腎兪(じんゆ): 一番後ろの肋骨からの付け根の背骨のでっぱりから2つ下がった背骨の両脇にあります。腎の経絡に属し、老化防止や足腰の強化に役立ちます。




4. 生活環境の調整

· 保温:冷えは気血の流れを悪化させるため、特に冬場は保温に注意

· 安静と活動のバランス:休息と適度な活動のリズムを維持

· ストレス軽減:安心できる居場所の確保

愛犬・愛猫のサルコペニア予防において、中医学は、単なる筋力トレーニングや食事制限とは異なり、体全体のバランスを整えるという視点を提供してくれます。食事、ツボケア、そして日々の観察を通して、愛犬愛猫の体質や状態に合わせたケアを継続することが、健康寿命を延ばす鍵となります。今日からできる小さなことから、ぜひ始めてみてください。それが、愛する家族との幸せな時間を長くする第一歩となるはずです。

監修者:さくらアニマルクリニック / 柿崎舞 先生 

日本ペット中医学研究会 https://j-pcm.com/

↓研究会会員病院検索ページ↓ 

https://j-pcm.com/memberlist/

この記事のPDFファイルはこちら