7歳以上のシニアでは白内障などを発症しやすく、眼に関する病気は案外身近にあるものです。ワンちゃんもネコちゃんも話すことができませんので、年1回は眼の定期検診を受けて、状態を確認してあげることが大切です。早期発見ができれば、完治したり、視力喪失の時期を遅らせることができます。
中医学では、眼のパーツと五臓【肝・心・脾・肺・腎】が関連していると考えるため、症状の出ている場所から内臓の不調を推測できる。
目頭(内眼角・外眼角)━━ 心
黒眼━━肝
白眼━━肺
瞳孔━━腎
眼瞼━━脾
こんな症状があったときは?
症状1
まぶた(眼瞼)が腫れぼったい
・まぶたが寝起きのように腫れぼったく、水気を含んだような色つやがあるようなときは、初期の水腫病が疑われます。これは循環不全などの病気による事もあり、治る気配がないとき、呼吸が落ち着かないときは動物病院へ。
・まぶたが腫れぼったいだけではなく、急に赤くなる場合は中医学
・まぶたの腫れが緩やかで、柔らかい場合は中医学でいう「脾虚」など
症状2
まぶた(眼瞼)にできものがある
・まぶたの皮膚にできるイボのような出来物がみられます。散瘤腫・麦粒腫という良性の腫瘤や悪性腫瘍などによる場合もあるので、まずは、動物病院へ。状態によっては外科手術をせず、進行を遅らせられる治療法もあります。
症状3
目頭と目尻(内・外眼角)が赤くなる
・中医学でいう心の状態が活性化している「熱」の状態です。赤くなるのは、初期はなかなかわかりませんが、ひどくなれば、毎日注意深くペットをみている飼い主さまであれば気がつくことが多いでしょう。目頭と目尻の赤みは、心疾患や熱性の病気(感染症による高熱、肺炎、熱中症などの急性疾患)などによる体温上昇などの原因が考えられますので、動物病院へ。
症状4
白目全体が赤くなる
・中医学でいう「熱」のために生じることが多く、熱性の病気(感染症による高熱、肺炎、熱中症などの急性疾患)による体温上昇、肺や気管支などの呼吸器病に注意が必要です。動物病院へ。
症状5
白目が黄色くなる
・黄色っぽくみえるのは、初期には気づかないこともありますが、病気が進行すると変化に気づく飼い主さまは多いです。その他の症状として、同時に、歯ぐきや皮膚が黄色くなります。肝臓病・胆嚢病・下痢・浮腫など、中医学でいう「湿熱内盛」のために生じたり、血液中の赤血球が何らかの原因により壊れたために黄色くなることが多く、至急動物病院での治療が必要です。
症状6
目頭や目尻(内外角)の色が白くなる
・中医学でいう「血虚」、いわゆる貧血であることが多いです。貧血となる原因を究明し、治療が必要です。
症状7
目がとても澄みきって見える
・中医学でいう「寒証」によることがある。動物が寒がりの場合や体のさまざまな状態を判断し、寒証によるものであるときは、温めるなど体を冷やさない対処が必要です。食事では、鹿肉、羊肉、くるみなどがおすすめです。
症状8
まぶた(眼瞼)の色が暗く見える
・まぶたの色が黒ずんでいるようにみえる状態で、人間でいえば眼にくまができるような顔色が悪い状態のときは、中医学でいう「腎虚症」が考えられます。中医学でいう腎虚症とは、西洋医学における腎臓病とは意味合いが違うため、中医学の診療ができる病院での診察をおすすめします。
症状9
眼球が赤く腫れる・眼球内の出血
・眼球の中で赤く見える部分は、眼頭、白眼、まぶた(眼瞼)です。中医学でいう「肝火」のため起こることが多く、緑内障・眼球および眼周囲の炎症により発症するケースが多い。眼球全体が強い炎症をおこしている可能性があり、失明して視力がなくなる危険が高いため、至急動物病院での治療が必要。
症状10
瞳が白く濁る
・中医学でいう「腎虚」によることが多く、白内障や水晶体核硬化症などが発症します。水晶体核硬化症であれば失明することはありませんが、体の老化サインのひとつなので漢方などによる養生が大切です。白内障であれば失明する可能性があります。外科的手術・点眼薬・サプリメント・漢方・ツボによる治療などにより進行を遅らせる方法もあります。
毎日のマッサージで眼の養生
眼の養生に効くツボと、中国でツボ・経路を刺激するときの手法で【推拿(すいな)】という手技の方法をご紹介します。
小学生を対象とした調査では、ここで紹介するツボを毎日ケアしたところ視力回復に効果があったことが報告されています。
慢性的に眼が弱いタイプの子には特に、毎日、朝夕の2回行ってあげるといいでしょう。
逆に、痛みや腫れ、赤みなど急性疾患が疑われる場合には、症状を悪化させることがあるので、ツボの刺激やマッサージは控えます。
1. 両手の親指を天応穴に当て、その他の指は前頭部に当てる。親指で、【指柔法】を20回軽く行う
2. 両第1指を晴明穴に当て、親指を皮膚におさえ当てながら上下に動かす【指推法】。これを繰り返し20回行う
3. 両第1指で四白穴を抑え、左右の第2指は下顎骨の左右のくぼみ部分に当てる。第1指で20回【按揉法】を行う
4. 左右の第1指を弓状に曲げ、内側面を眼瞼上縁に当てる。同時に第2指を太陽穴に当てる。第1指内側面で上眼瞼から下眼瞼へ環状に眼瞼部を20回【擦法】する。同時に第2指で太陽穴を【按柔法】で20回揉む
【指柔法】:指の指腹を皮膚にぴったりつけて、力は軽く温和に回旋しながらもむ。
【指推法】:指を皮膚にやや強めにおしつけながら上下に動かす。
【擦法】:手指で皮膚の上を往復摩擦する。力加減は、軽くわずかに皮膚に触れる程度。
【按揉法(按柔法)】:指を皮膚に押し付けながら回旋してもむ。
監修者:平成動物病院 院長 佐藤義広
日本ペット中医学研究会 https://j-pcm.com/