「食べられること、歩けること、寝られること」
老犬のウェルネス(生活の質)の維持には「食べられること、歩けること、寝られること」が重要です。
「動物」たちは文字通り「動く物」、すなわち動けることがとても大切です。
人と同様、ペットたちは年を取ると当然足腰は弱ってきます。特に後ろ足から弱ってくることが多いです。
近年の統計では8歳以上のペットたちの8割以上は何らかの関節疾患を持っているともいわれています。ただそれを表に表していない(隠している)場合が多くなかなか解りづらく発見が遅れる場合が多いです。
「お隣の方が五十肩かどうか」は、なかなか解りませんよね。
足腰が弱くなったペットたちのサイン
足腰が弱くなったペットたちのサインとしては、
・前足が外に開く、肘が外に出る
・背中が曲がる、腰が細くなる
・お散歩で歩くスピードが遅くなった
・首を下にして歩く
・腰を左右に振って歩く
・後ろ足が前に出てくる、後ろ足の間隔が狭くなったりクロスする
・階段をうさぎ跳びしながら登る
・高いところに登らなくなった、登り損ねる、失敗する、ジャンプするのに躊躇する
・爪とぎをしなくなった、爪が伸びるのが速くなった、変に削れる
などがあります。このような兆候が見られましたらかかりつけの獣医さんへご相談してみるといいと思います。
自宅でできるエクササイズのお勧め
そこで特に大きな疾患や異常などが認められなかった場合にはご自宅でできるエクササイズをお勧めします。
ペットたちの基本精神として「使いにくいものは使わない」のがモットーなので弱った足は使わずに生活してしまう為、弱りかけている足はますます弱っていきます。足には「立つことが出来る筋力ライン」というものがあるようで、徐々に弱った筋肉がそのラインを越えてしまうと一気に弱るスピートが増してしまうので、「昨日まで立てたのに急に立てなくなった」、「あっという間に寝たきりになってしまった」という事になってしまいます。また先程にも書いたようにヒトのように自らエクササイズをする考えをペットたちは持ち合わせていないので自らすすんで筋トレをすることは無いと思います。そこで皆さんはペットたちに気づかれないようしながらペット自ら足腰を使わせるご自宅でのエクササイズをお勧めします。
老犬のエクササイズ
足の曲げ伸ばしには砂浜のお散歩、草むらのお散歩が有効です。
後ろ足の筋力アップには、上り坂道のお散歩、CMスタンディング、ステップご飯、お腹の上のバランス運動、腰の横揺らし運動などが有効です。
CMスタンディング
前足を持ち上げて後ろ足だけで立たせて2分間キープする運動です。はじめは低い位置から始めるといいと思います。2分間はちょうどテレビのCMの時間くらいです。CMになったらやってあげましょう。
ステップご飯
前足を台に乗せて食事を与える事で、食器と前足だけが乗る台(雑誌や新聞などを重ねたものなど何でもOK,はじめは低い高さから始めましょう)を作って、フードやお水を与えましょう。
お腹の上のバランス運動
飼い主さんがあおむけに寝て、その上にペットを立たせる運動。慣れてきたら少し左右に揺さぶったりします。
腰の横揺らし運動
立たせた状態で腰を左右から交互に軽く押して腰を左右に揺らします。
老猫のエクササイズ
室内飼いが推奨されて以来、運動不足が深刻です。できれば1日2km以上は歩いてもらいたいところです。
元々必要最小限(捕食行動となわばりのチェックくらいでしょうか)しか動きませんし、またエクササイズもなかなかやりづらい面がありますので、動かないといけない場面を作る工夫が必要です。ネコ科の動物はお腹が空かないと動かない習性があり、そのためには「胃袋を掴むこと」が大切でしょう。フード探検やフードハンティングなどでお家の中でも動くことを促しましょう。
フード探検
フードを決まった場所・時間に置かず、いろいろな所にフードを置いて宝探しのように探させて動くことを促します(ゴキブリやネズミの餌にならないようにご注意ください)。
フードハンティング
逃げる獲物を捕まえて捉える本能を利用して、右や左にフードを投げて取りに行かせましょう。はじめは近場から初めて慣れてきたら徐々に遠くに投げてみましょう。
マッサージもおすすめです
エクササイズが終わったら仕上げはマッサージです。
頭頂部、首の付け根、背中の真ん中、腰、後ろ脚の付け根(股関節)周囲、後ろ足の肉球の上(湧泉というツボ)の皮膚を動かす程度の軽い力で優しくマッサージしてあげましょう。
またこれらのエクササイズはシニアばかりでなく若いうちから初めて「筋肉貯金」をしておかれることが、とても重要で強くお勧めします。
いつまでも楽しく一緒にお散歩できることを目指して、楽しみながらやっていきましょう。
監修者:麻生獣医科医院 / 上田裕 先生