ペットの認知症と中医学<br>-愛犬・愛猫の健康を守るために―

2026/09/12 公開

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ペットの認知症と中医学
-愛犬・愛猫の健康を守るために―

ペットの長寿化に伴い、犬や猫の認知症が注目されています。人間と同様、ペットも高齢になると認知機能が低下し、日常生活に影響を及ぼすことがあります。一方で、中医学はペットの健康維持や認知症予防に役立つ可能性があります。

認知症になりやすい品種や年齢

ペットの認知症は、加齢に伴う脳の機能低下が原因で起こります。犬で多く見られ、猫でも報告されています。その中でも、日本では柴犬をはじめとした日本犬で多い傾向があり、筆者の感覚で半分程度が日本犬の印象があります。一方で海外での報告では、とりわけ日本犬で認知症が多いというデータはないようです。柴犬は中型犬であり、鳴き声や徘徊によっておうちの方の心身の負担が大きくなることから、相談の件数が多くなることも影響していると感じます。発症年齢は10歳ごろから見られますが、12歳くらいになると急増します。

認知症になった際のからだの変化

ペットが認知症を発症すると、脳の機能低下によって以下のような症状が現れます。

いずれも早期に気づき、適切なケアを行うことが大事です。

・方向感覚の喪失:家の中で迷ったり、家具にぶつかったりする。

・睡眠の変化:昼夜の生活パターンが逆転し、夜間に吠えたり徘徊したりする。

・社会性の低下:飼い主や他の動物への反応が減り、関心を持たなくなる。

・トイレの失敗:トイレではない場所で排泄をする。

・不安や攻撃性の増加:五感から得られる情報が減ることで環境の変化に過敏になり、落ち着きがなくなる。

・学習能力の低下:以前覚えていた「おすわり」「まて」などのルールを忘れる。

これらは単なる老化と見過ごされがちですが、進行するとペットと飼い主の生活の質に大きな影響を与えます。早期発見が重要で、獣医師への相談をお勧めします。

中医学的視点:ペットの認知症の中医学的解釈

中医学では、身体全体のバランスを重視し、その状態を「証(しょう)」という中医学的解釈の概念で捉えます。ペットの認知症も、臓腑の不調や気・血・津液(しんえき)の乱れが関係します。以下は、認知症に関連する代表的な症状群についての中医学的な解釈です。

・腎虚(じんきょ)

中医学では、「腎(じん)」が生命エネルギーを貯蔵し、生殖や成長の機能を持っていると考えます。高齢になると腎の機能が低下することで、記憶力低下や体力の衰え、聴力や視力の低下などの症状が現れます。

・気血両虚(きけつりょうきょ)

気(エネルギー)と血(栄養)の不足は、脳の機能低下に影響します。元気の低下、反応の鈍化、食欲低下などの症状が見られます。

・痰濁阻滞(たんだくそたい)

体内の「痰」(代謝の滞り)が脳に届ける気血を詰まらせ、思考や行動が鈍くなる状態です。徘徊や行動異常を起こします。

・瘀血(おけつ)

血液の巡りが悪くなり滞ってしまうと、瘀血の状態になります。 脳へ行く血流が瘀血の影響を受けると、 記憶力の低下や頭痛、めまいなどの症状が現れることがあります。

・肝陽上亢(かんようじょうこう)

肝の中で陰と陽のバランスが崩れ、陽のエネルギーが過剰になると、不安や興奮、夜間の吠え声などの症状が現れます。

これらの中医学的な解釈に基づき、それぞれの状態に応じた治療やケアが行われます。中医学は、個々の体質や症状に合わせたオーダーメイドによる改善を提案できることが強みです。

認知症の中医学的アプローチ

中医学では、薬膳、鍼灸、漢方などを用いてペットの体調を整えます。以下は、認知症に対するケア方法の一例です。

・薬膳と栄養

腎の機能を補う食材(例:黒ゴマ、サーモン、クルミ)や、気を補う食材(例:鶏肉、じゃがいも )など、中医学的にバランスを整えるものを食事に取り入れましょう。

獣医師や中医学専門家と相談し、ペットの体質に合った食事を摂り栄養バランスを整えます。

・鍼灸

鍼灸は、経絡の流れを整え、気や血の循環を改善します。認知症のペットでは、脳への血流を促進するツボ(例:百会(ひゃくえ)、腎兪(じんゆ))を刺激することで、症状の緩和が期待されます。

・漢方

腎が衰えている場合、気や血が足りない場合、代謝や血流が滞っている場合、など、症状に応じて処方されます。

これらの漢方は必ず専門家の指導のもとで使用してください。

・生活環境の工夫

認知症のペットはストレスに敏感です。規則正しい生活リズム、静かな環境、適度な運動が効果的です。また、ご家族との穏やかな触れ合いはペットの不安を軽減に役立ちます。

予防の重要性と中医学の役割

ペットの認知症は、進行を遅らせることが可能と考えられています。中医学は、予防において特に有効なアプローチを提供します。以下のポイントが重要です。これらは発症しやすい日本犬系はもちろん多くのペットにとって役に立つ対策です。

・早期からの体質改善: 若いうちから腎や気や血のバランスを整えることで、老化の影響を最小限に抑えると考えます。定期的な健康診断によりペットの体質を把握し、適切なケアを始めましょう。

・ストレス管理: ストレスは気血の流れを乱し、認知症のリスクを高めます。穏やかな環境や、適度な遊び、安心を提供することが重要です。

・食事と運動: バランスの取れた食事と適度な運動は、気や血の循環を促進し、脳の健康を保ちます。例えば、腎を補う黒豆や、血を養うレバーを少量取り入れることで、体内のバランスを整えます。

・定期的な中医学的ケア:

 鍼灸やマッサージを定期的に行うことで、経絡の流れをスムーズに保ちます。これにより、老化による気や血の停滞を防ぎ、認知機能の維持に役立ちます。

ペットの認知症は、飼い主にとって心の準備が必要な課題ですが、中医学のアプローチを取り入れることで、症状の緩和や予防が可能です。早期からの予防とケアで、愛するペットの笑顔を守りましょう。中医学的ケアにあたって、必ず獣医師や中医学の専門家に相談してください。

監修者:ますだ動物クリニック / 増田国充 先生 

日本ペット中医学研究会 https://j-pcm.com/

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